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高齢者の引きこもりに効果あり!?ハイレゾ盤「昭和歌謡」を高齢者に聴かせたらスッゲーことに。

投稿日:2018年10月5日 更新日:

今日の良き日「敬老の日」のイベント

9月17日敬老の日、全国各地で敬老会が開催された。ハイレゾでの歌謡曲の効果を見てみたいとの気持ちもあり、お世話になっている議員さんにお願いして福岡市内自治会の敬老会のイベントに参加させてもらった。それが「ハイレゾ盤昭和歌謡を聴いて元気になろう!」だ。名前はチープで安直なイベントだが、中身は昭和歌謡の歌詞カードを用意し、「ハイレゾ盤の昭和歌謡」をみんなで聴くというシンプルなものだ。

約50名の高齢者が集まった。70代から90歳代のおばあちゃんまで。

ハイレゾの魅力

ハイレゾ音源の魅力は、いわゆる高品質のデジタル音源データである。CDの約3倍から6倍のデータ量があり音に立体感がある。非常に滑らかなためスピーカー近くで聞いてもやかましくなく、離れた場所で聴いても聞こえにくいとか音量が小さく感じるといったことが起きにくい。ここでのいわゆる「いい音」とは「データ通り」の音を、アプリケーション上やアナログ変換した際や、スピーカーからの出力の際に極力味付けをしない、という意味である。つまりは通常様々な環境で聞いている「お手軽でどこでも耳にする音」と対極的なポジションと考えていただくとわかりやすいと思う。それは自然界に昔から存在している音に近く(もちろん楽曲によってはそうでないものもある)「耳馴染みの良い音」として感じることができる。

当日用意した歌詞カード。60年代、70年代の代表的な歌謡曲ばかりだ。

下を向いていた高齢者が!

かねてより敬老会のイベントのネタが尽きているそうで、新しいネタに対して歓迎ムードであった。設備を運び込んで、準備をしていると何人かのおばあちゃんが物珍しそうに近寄ってくる。歌詞カードを事前に配布していたがパラパラとめくる人が何人かいても、それ以上の反応は見られない。

敬老会の式次第は自治会長の挨拶に始まり、議員さんなどの来賓の挨拶、ゲストによるお謡があって、その後歓談タイム、というもの。お年寄りにはちょっと胃もたれするのではないか?と思われる揚げ物ふんだんのお弁当と記念品、お菓子とビールやお茶などが1セットとしてふるまわれるようだった。お弁当が揚げ物が多いのもあり、会食時間が短くお年寄りも手持ち無沙汰の様子。

自分もどのタイミングで音楽をかければいいのかわからなかったが、事前に配布していた歌詞カードを片手に「この曲聴けるの?」と一人のおばあさんが自分のところにやってきた。自分は、渡りに船と自分も早速その曲をかけてみた。1曲めは尾崎紀世彦の「また逢う日まで」(1975年)。そのおばあさんは尾崎紀世彦のファンでCDを持っていたためリクエストしたとのことだった。

気がつくとフィーバー状態に!

会場では主に70代と80代の高齢者が多く、1975年は当時の年齢で30代後半から40代のためあまり大きなリアクションはなかったが、「なんだか懐かしいな・・」という空気感は若干あった。そこで2曲目に舟木一夫の「高校三年生」(1963年)をかけてみた。すると、ここで驚きが。

一緒に歌うことなど促してもいないのに歌詞カードを見ながらの「大合唱」が始まったのだ。なんと、サビの部分はほぼ全員の高齢者が歌っているではないか。この光景には流石に鳥肌がたった。歌が始まるまでは、会場内の「ざわつき」が不安定であったが、イントロの時点で「聴いたことある?」という空気があり、歌が進むにつれて大合唱に。高校三年生のあとは、賑やかだが決して不快ではない「ざわつき」がほぼ一定の状態で続いた。

終了時間を大幅に超え、まさに大騒ぎ。カラオケやりたい!という声も。

その後、歌詞カードの曲は全て唄いつくされ(今回18曲分用意していた)、リクエスト大会、カラオケ大会まだ始まってしまった。こうなるとハイレゾ音源の歌謡曲だけでは対応できず、youtubeなどでカラオケ音源を引っ張ってきて歌ってもらった。自治会長もこの光景を見て「今日の敬老会は時間無制限とします!」との宣言が出てしまう。こうなったら自分も腹を据えて手持ちの昭和歌謡に始まり、現地で急ぎダウンロードしたものまで楽曲をかけまくった。

お大騒ぎの後の電話番号交換??

イベント中のそれぞれのテーブルの会話を聞いてみると、昔話に花を咲かせる人、自己紹介をしている人、さらには連絡先の交換をしている人までいた。単純にテンションアップしただけでなく、次回の「出会い」に対して高齢者がアクティブになっていたのは大きな驚きであった。議員さんにそのことを伝えるととても驚いていた。

例年通りの「敬老会」は、ご挨拶して来賓の言葉があり、お弁当食べて解散というシンプルなもの。小学生の「感謝の言葉」や有志の出し物などをやっている自治会もあるが、コンテンツとしての「敬老会」が大きく見直されるべき時代になってきていないか。

自らを「敬老者」と名乗り、電車の席を取ってしまうトラブルが世を騒がせたが、昨今若者と高齢者の対立構造は目に余るものがある。しかし、にこやかな高齢者を見ていると「キレる高齢者」の姿は想像し難かった。もし「高品質の懐かしい音」がこういった高齢者を穏やかにできる可能性があるとすれ様々な問題を解決できるのではなかろうか。高齢者には「きょういく」と「きょうよう」が必要と言われている。「今日行くところ」と「今日する用事」のことだ。定年を迎えた人が突然、「24時間365日」自由になった時、毎日やること行くところを見つけるのは正直至難の技だ。その結果が誰とも会話をしない、家から出ない、毎日行くのは病院、という歪んだ現実だけが待っている。

これからも増え続ける「高齢者たち」

内閣府の発表では平成28年の統計で我が国の総人口は、平成28(2016)年10月1日現在、1億2,693万人となっている。65歳以上の高齢者人口は、3,459万人となり、総人口に占める割合(高齢化率)も27.3%となった。すでに4人に1人が「高齢者」となり、行き場を失っている。彼らの「きょういく」と「きょうよう」を準備するのは至難の技だ。介護のあり方も「支える介護」から「寄り添う介護」にシフトしている。高齢者との新しい付き合い方は、その下の世代にとって喫緊の課題だ。

 

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