花田荘は、築40年を超える2階建の木造アパートである。
間取りは6畳の居間に4畳半のダイニング、風呂トイレは別でトイレは洋式。
お風呂は給湯式だが、風呂桶が1メートル四方ないサイズで、
しゃがんで入るタイプ。
洗濯機はダイニングに置くので思いの外狭くなる。
キッチンもお世辞には大きいとは言えず90歳のおばあちゃんは、
コンロの上にまな板を置いて使っていた。
40年前に「最新」としてこれができたと思うと、
「住まい方」の変容は凄まじい。
バブル期の投資用アパートは、三点ユニットで18平米とかザラであるが、
ちなみに花田荘は24平米ある。その差6平米は約4畳分。
実は、広さとしては全く申し分ない。
お風呂は湯船入らない、シャワーだけと割り切れば全く問題ない。
今の若い子はテレビなんて見ないし、「シェア」の概念が強いから
洋服も家電も要らないものがたくさんある。
アパートはそう簡単には建て替えられないから
要は発想の転換を上手にしていけば、無駄なリフォームはいらない。
従来の工務店や不動産会社は、
「古い」=「汚い」→入居率が下がる
このロジックでマーケットを拡大していった。
そもそも古くて入居率が下がるのなら、土台アパート経営なんてできない。
建物が新しい間にコストを回収するモデルなんて存在しない。
いまだに「お金さえ出してくれれば、何もしなくてもいいですよ」という言葉を
ポジティブに信じるオーナーさんは、このロジックにより10年後じわりじわりと
茹でガエルになっていくのである。
今は低金利だから、と言われて建てたアパートが
金利上昇、貸し剝がし、物件売却なんてなった日には目も当てられない。
古い物件を持つオーナーは、自分で大切にするか、脳みそに汗かいて
いい企画を思いつくか、ハードではなくソフトにコストをかけて
企画していくより他ないのである。
築年数40年を超えた木造アパート。入居率100%で、
シニアと若者が共存する。洗濯物がもはや、あじ。