花田荘ロゴマーク。今回のリニューアルで制作された。鏝絵で左官さんのこだわり。
全国に多く点在する古いアパート。
新たな都市開発の波の中で取り壊されることが多いが、
その狭間の中で生きながらえるアパートも少なくない。
一昔前は「ボロアパート」といえば「木造」のイメージだったが、
近年ではバブル期に多く建てられた投資用の鉄骨造・RC造のアパートも
高築年アパートになってきている。
今の耐震基準や消防の基準を満たしていない物件(1981年以前の旧耐震とか)も多く、
しかも、それらに住んでいるのは行き先を失った「高齢者」が住んでいる。
独り住まいの高齢者は保証人になってくれる人がおらず、
結果一箇所に長く留まる傾向もある。
コモディティ化した高築年アパートは満室なのは当然稀で
そうなると入居率を上げるために家賃を下げるしかなくなってくる。
家賃が下がると「アパートが荒れる」傾向があり、
騒音問題の増加・ゴミ出しマナーの低下などの近隣トラブル、
さらには犯罪の温床、高齢者の孤独死が発生しやすくなる。
ここ数年では、無許可の民泊などもトラブルの一因であった。
隣近所のコミュニケーションも少なくなり、
アパートのオーナーもやっとの事で返済が終わっても
トラブル続きで100パーセントの入居を目指す気力もなくなり、
家賃収入が月々入ってくる「お小遣い」の感覚に陥ってしまう。
ここが一番怖いところで、本来なら入ってくるはずの金額に目を背け、
固定資産税が払えるギリギリの金額が入ってくればいいやと、
感覚が麻痺してしまい、アパート経営に背を向けてしまうのである。
もちろん、アパートの保守管理にコストが回ることはない。
そうなるとトラブルの温床からいわゆる「事故物件」化にまっしぐらな訳で、
安易なアパート経営は「負のスパイラル」が待ち受けているだけなのだ。
福岡市中央区大手門に花田荘というアパートがある。
目の前には市民の憩いの場の大濠公園があり、好立地ではあるが、
築年数は40年以上、昔ながらの間取りで若い人は借りにくい印象であった。
今では入居率100%を誇るが、
当時の入居は6部屋ある内の半分で、住んでいたのは全員60代から80代のお年寄り。
空いている部屋にたまに入居があるが住んでいるお年寄りとトラブルを起こし、
すぐに退去してしまう。隣近所とのお付き合いなんてあったもんじゃない。
入居者の一人はもうすぐ90歳で、耳が遠いため朝からAMラジオが全開で流れていた。
いわゆる「やばい物件!」である。
この物件をなんとかしようと、3年前に立ち上げたプロジェクトが
HANADASOUPROJECT。
まあまあ、そんままの名前だし、アルファベットにすると
かなり読みにくい。
これから複数回にわたって、これまでの花田荘で発生したトラブル、
HANADASOUPROJECTの波乱万丈を紹介してこうと思うので、
どうぞお付き合いください。