project ライフ

いまを楽しみ、いざに備える 「ライフプラグのある暮らし」①

投稿日:

第1回:関心と無関心の狭間で

オーストラリアのシドニーに約1年間暮らしたことがある。もう30年前になるが、ワーキングホリデー制度を利用して英語もままならいまま日本を飛び出した。

大自然に恵まれた彼の地では、サーフィンやゴルフにチャレンジし、パブで心ゆくまでビールを飲み、ビーフや羊のステーキにかぶりつき、アパートの隣人マリアおばあさん(ドイツ系)からは愛情と砂糖たっぷりのケーキをいただき、日々の生活でストレスや不便を感じることはほとんどなかった。

帰国後、私は日本の生活に戸惑った。その理由は情報の多さだ。オーストラリアで最低限の英語で生活してきたため、ほとんどテレビを観ず(わからないからつまらない)、新聞や雑誌も読まなかった(そもそも読めない)。そのせいで日本語の情報が壊れたシャワーの水のように降りかかり、心がいっぱいいっぱいになったのだ。

特にテレビのインパクトはすごかった。食事をしようと入った中華屋のテレビで流れていた「どっきり」系の番組に胸が詰まり、あわてて店を出た記憶がある。そこで私はテレビを観ることやめ、耳を閉ざし、活字だけの生活を始めた。

それから3年と経たず、私はテレビを観始め、仕事をし、酒を飲み、細胞の一つひとつまで情報に染色されたおじさんに育っていった。しかし、我が身の半径3メートル以内の事象には関心を持つが、それ以外は他人事だ。東京在住の私は、あの2011年3月11日の大震災のときも居酒屋で酒を飲んで一夜を明かし、ボランティアのようなことをしたことは一度もない。

それがこのところ情緒が不安定になった。怒りっぽくなり、涙を抑える機能が低下してきたようだ。齢のせいだとは思うが、これまで他人に対して無関心であり続けた細胞が、1軒目のレモンサワーが5軒目にはテキーラのごとく感じてしまうように長い時間をかけて酔いが回り、新たな感覚を求めどくどく脈を打って生きはじめたような感じだ。

そんな時に「IMAIZA」から相談が舞い込んだ。文字を書く仕事の端くれで生活してきたから、それなりのことをまとめて書くことはできると思う。しかし、本サイトの言う「だれもが持っている“いざ”の時に誰かの役に立ちたいという気持ちが、実現できる」情報を、他人事で書いては駄目なような気がした。だから、まだ関心と無関心の狭間にいる私だが、この連載では自分ごとのように取材して書いてみたいと思う。

(以下次回「ライフプラグとの出会い①電気のない生活」)

-project, ライフ
-

執筆者:


comment

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

関連記事

神戸市で防災用の手話動画の配信開始!聞こえない人が必要とする支援を学ぶ

「手話言語法」というのを知っていますか? まだ法律として成立していない法案なのですが、その主旨は、「ろう者の一層の自立と社会参加のため、手話が言語として認められ、ろう者が日常生活において安心して手話を …

インドア、アウトドアを問わず大活躍! 日常の暮らし、遊び、災害時にも使えるロケットストーブ、薪ストーブの作り方、バリエーション、活用術本!

ようやく熱い夏が終わろうとしていますね。日一日と過ごしやすい気候になり、東北地方では河原で芋煮会シーズンを迎えているようです。芋煮会の起源は江戸時代にさかのぼり、山形に始まったというのが定説だそうです …

月1.5万円〜で、全国のホステル泊まり放題。多拠点生活を実現できる「ホステルパス」先行予約開始。

シェアカーや民泊などのシェアリングエコノミーが注目を集めて久しくなります。人口が増えず、新たなマーケットを生み出す可能性が乏しくなり、未だに既得権益団体が幅を利かす日本において、若者たちがこのマーケッ …

おひとり様の救世主となるか!? 旅、暮らしからエンディングまでをトータルサポートするおひとり様専門サービスを開始

ハードボイルドの探偵・冒険小説の主人公はほぼ独り者です。ダシール・ハメットが生み出したサンフランシスコの探偵サム・スペード、レイモンド・チャンドラーが描いたハリウッドの探偵フィリップ・マーロウ、A・J …

いまを楽しみ、いざに備える 「ライフプラグのある暮らし」③

第3回:ライフプラグとの出会い②「エンジンを使わない自動車」とは? 数年前からエコカーやハイブリッド・カー、電気自動車などの言葉を目にしたり、小耳に挟んだりすることが多いが、自動車にあまり興味がない私 …

facebook